これまでのエピソードを振り返ってみると、内容は夫婦のことばかりであった。
まずは筆者夫婦の人となりを知ってもらおうと思って書いていたのであるが、決して内容が面白いわけではない。
このエッセイは、面白い話ができるようになるために始めたのだから、少しはクスリと笑えるようなことも書かなければならないであろう。
そのため、今回は昔旅行した香港でのエピソードを書いてみようと思う。
職場の同期と男三人で香港に行ったのは、就職してから5年ほどしてからであった。
もうだいぶ昔の話である。
ちょうどその当時、仕事で英語を使う機会が少しずつ増えてきたこともあり、職場では若手に英語を学ばせようとする機運が高まっているところだった。
しかし、こちらにしてみれば、ただ単に勉強するのもつまらない。
そもそも勉強にモチベーションなど湧くはずがないわけである。
そこで、海外旅行でもして、英語を使う環境に自らを置いてみようと思い、仲のいい同期のN君とS君2人を誘ったのである。
旅行も楽しめて、英語力もアップすれば一石二鳥である。
ここで、ふと筆者は考えたのである。
ツアーだと添乗員に任せきりになるので英語を使う機会は少ないだろう。
そこで2人を説得して、旅行代理店ではホテルと航空機だけを予約することにした。
添乗員なし。
完全自由行動。
楽しい、楽しくないは自分たち次第。
そんな旅である。
なんとも英語力が身につきそうではないか。
楽しむために色々計画すればするほど、英語を使わざるを得ないわけである。
ただ、海外旅行慣れしていない3人である。
いきなりアメリカやヨーロッパに添乗員なしで行くのは少々、というかかなり不安がある。
しかも、日本から遠ければ航空機代が馬鹿高くなる。
やはりまずはアジアでしょう。
何がやはりなのかさっぱり分からないが、そんなことを3人で言いつつ、旅行先を英語圏の香港・マカオに選んだわけである。
振り返ってみると、添乗員なしの計画にしたのが、運命の別れ道であった。
香港であんな不幸なことが起きるなんて、予想だにしなかったわけである。
(続く)