ジャンクフードをめったに食べない妻が、珍しく通販でハンバーガーを買った。
子育てでずっと家の中にいるから、外食というものができない。
食べるのは、自然と手作り料理になる。
そうなると、たまには変わったものを食べたいという気持ちにもなるだろう。
そこで冒頭のハンバーガーを取り寄せたようだ。
しかし、そのハンバーガーは妻の口に合わなかったらしい。
筆者にあげると言ってきた。
妻がいらないと思ったものを筆者が譲りうけるのは日常茶飯事である。
筆者はタダでもらえるわけだから残飯処理であっても別に良い。
むしろウェルカムである。
さて、妻が取り寄せたのは佐世保バーガーであった。
なぜわざわざ佐世保バーガーを取り寄せたのかはわからない。
たまたま目についたのだろう。
筆者は大のハンバーガー好きである。
いわゆるチェーン店だけでなく、ハンバーガー専門店にも定期的に行く。
佐世保バーガーに関しては何年も前に一度、京都で食べたことがある。
なぜ京都かというと、京都に出張に行った際、同行していた先輩が佐世保バーガーの看板を見て食べたいと言い出したからだ。
ちなみに筆者は佐世保どころか長崎にも行ったことがない。
そのときの佐世保バーガーは美味しかった。
その良い印象があったので、喜んで妻から佐世保バーガーを譲り受けた。
しかし喜んだものの、すぐに冷静になった。
ハンバーガーが一番美味しいのは、作りたてである。
一度冷凍を経たハンバーガーが美味しさを保っているとは思えない。
いくら近年の冷凍食品の技術が向上したと言っても、限界があるだろう。
しかし、食べてみないことには分からない。
早速、説明書どおりに佐世保バーガーを用意してみた。
一晩冷蔵庫に入れて解凍し、1分ほどレンジで温める。
簡単である。
一口食べてみる。
・・・う、うん。
可もなく不可もなく。
美味しいとは言えない。かといってマズいわけでもない。
文字通り可もなく不可もなく。
味にうるさい妻の食が進まないのも頷ける。
具材にオリジナリティはある。
スクランブルエッグが入っている。
しかし冷凍のせいか少しパサついている。
そして、バンズ。
冷凍だと、水分を吸ってふにゃふにゃしている。
食べているうちに、ふと佐世保バーガーって何なんだろうという疑問が湧いてきた。
スクランブルエッグが入っているのが佐世保バーガーなのだろうか。
何年も前に食べた時の具材はもう忘れてしまった。
早速検索。
Wikipediaによると、佐世保バーガーの特徴は以下二つであることが分かった。
・佐世保市内の店で販売されている。
・注文を受けてから作り始められている。
これだけ。
具材や調理方法、味などに特徴はない。
これらは店によって違うのである。
ずいぶんシンプルである。
翻ってこの冷凍の佐世保バーガー。
二つの条件を満たすかは微妙だ。
佐世保市内の店が製造・販売しているから、一つ目の条件は満たすかもしれない。
しかし、二つ目が怪しい。
ネットで注文を受けてから作られているだろうか。
多分、そうではない。
というか、そもそもそこを深く考える意味はない。
二つ目の特徴というのは、美味しく食べてもらうために作りたてを提供する(作り置きしない)という意味なのだ。
たとえ店側が作りたてのバーガーを瞬間冷凍していたとしても、上述のとおり解凍したときにはその味が落ちているから、条件を満たすとはいえない。
この条件を満たすには、作ったばかりのバーガーを注文者の家にテレポーテーションさせるしかない。
果たして、このバーガーに佐世保の冠を被せていのか?
そんな疑問を抱きながら食べ終えた。
そして同時に、以前京都で食べた佐世保バーガーは、佐世保バーガーの一つ目の条件を満たしていないことにも気づいてしまった。
つまり、筆者はまだ本物の佐世保バーガーを食べてなかったということなのだ。
腹は満たされたが、何かを失ってしまった気がした。
無性に、佐世保に行って本物の佐世保バーガーを食べたくなった。