公開されたばかりの映画「ジョーカー」を観た。
とにかく悲しすぎる、この映画は。
精神病を持つアーサーが、バットマンの宿敵である殺人鬼「ジョーカー」
になるまでを描いた映画だが、救いようがない結末に胸が張り裂けそうになる。
とにかく、主人公のアーサーが報われない。
身体に不自由のある母親と二人、懸命に生きようとしているのに、
彼自身の病のせいで人間関係や仕事ともにうまくいかず、職を失う。
ある日、突発的に殺人を行ってしまったアーサーだが、
それに対する世間の反響に快感を覚え、徐々にジョーカーへと変貌していく。
失業、幼い時に母にネグレクトされた事実の発覚、
憧れていたコメディアンのマレーにテレビで馬鹿にされる、等々、
いくつもの不幸が起こるが、幸福なことは何一つアーサーに訪れない。
本当に救われない。
彼が住む街、ゴッサムシティ。
清掃員のストで街中にゴミが溢れ、貧困層の憎悪が富裕層に向けられる街。
ジョーカーはそんな街が生んだ怪物である。
ゴッサムシティが抱える社会問題は、現実社会に通じるところがある。
格差社会、貧困の連鎖。
アメリカでの上映開始時、暴動に備えて厳重な警備がなされたというニュース
を目にしたが、この映画に刺激を受けた人間が、映画と同様、
富裕層の人々を狙って暴動が起こす可能性は十分にある。
それほど、この映画には人の心を揺さぶる力がある。
決して楽しい映画ではない。
また素晴らしい映画かと言われると評価し辛いが、観終わった後、
考えさせられる映画であることは確かだ。