ロジとは、ロジスティクスの略称であり、物事の準備や段取りに関連する業務全般を指す言葉である。
会議のロジであれば、会議室の確保や座席の設営、配付資料のセッティングなどがそれにあたる。
この言葉は霞ヶ関界隈でよく使われている用語のようだ。
先日、職場の若手(三年目)が期間限定で筆者のグループにやってきた。
二桁も歳の離れた後輩への指導を通じ、若手が成長するためにロジがどれだけ重要か、再認識させられた。
ロジは全ての業務に通じると言っても過言ではない。
芸術家など一部の特殊な職業を除き、ロジができない人間の仕事の質は、知れたものである。
それほど、ロジの能力は仕事全般の能力と密接な関連がある。
ロジを通じて得られる能力。
それは主として、想像力、危機管理能力、仕事の要領であろう。
これらは現代のビジネスパーソンにとって非常に重要な要素である。
先に例示した会議のロジについて考えてみる。
担当者は以下の流れで会議の開催に向け準備する。
①会議に要する時間、出席者の確認
②開催日時の決定、会議室の確保
③出席者への案内
④会場の設営
⑤配付資料のセット
⑥突発事象への対応
上記について、以下で順に見ていく。
①会議に要する時間、出席者の確認
多くの場合、これらは簡単に済ませられるであろう。
若手なら、会議の主催者に聞けば教えてもらえるからである。
しかし、自らが会議を主催し、ロジも行うとなると話は難しくなる。
議題や会議の目的に応じて出席者や会議に要する時間が変わるため、担当者には想像力が求められる。
白熱が予想されるのであれば、時間は長めに見ておかなければならない。
またどういう点にまで話が及ぶかに応じ、出席者が変わってくる。
出席者に漏れがあると、会議自体の意味がなくなりかねないので、この段階でのミスは許されない。
②開催日時の決定、会議室の確保
担当者は、全ての出席者の都合がつく時間を確認し、会議室を確保しなければならない。
気をつけなければならないのは、会議の開始時間に余裕をもたせることである。
たとえば、会議の直前まで別の打ち合わせや会議が入っている出席者がいれば、そちらの進捗具合によりこちらの会議への出席が遅れてしまいかねない。
そのため、とりわけ会議のメインプレーヤーとなる出席者については、直前に予定が入っていないか確認しておいた方がよい。
終了時間も同様である。
議題、あるいは出席者によっては議論が白熱して、予定時間を超過することもある。
会議室も、時間的な余裕をもたせて確保する必要がある。
③出席者への案内
工夫が必要な作業である。
メールで案内するのであれば、会議の日時、場所、議題を書き記すのはもちろんである。
加えて、配付予定資料を添付し、事前に目を通すように書いておくとよい。
会議内容を頭に入れた状態で会議に臨んでもらうことで、要点に絞った会議内容になるだろう。
誰しも会議が長引くことを望んでいない。
④会場の設営
特に初級者が注意しなければならない作業である。
当たり前であるが、設営は、会議開始時間より前に終えていなければならない。
設営が間に合わないために、出席者を待たせるなどという失態は避けなければならない。
重要なポイントは、設営にどれくらいの時間を要するか、である。
初めて使う会場であれば、事前に下見をしておくと、設営に要する時間が計算できる。
また出席者が多いと、他の会議室から机や椅子を補充するなど、思った以上に時間がかかることもある。
たっぷりと時間に余裕を持たせなければならない。
⑤配付資料のセット
最近は電子化が進んでいるが、紙資料を配付する場合、担当者の要領が問われる。
印刷設定(両面、縦横、ページ番号)や落丁、部数など、確認観点は多い。
出席者数よりも部数を多く用意しておくのは当然である。
場合によっては、会議開始直前まで資料の修正が入ることもある。
担当者は限られた時間で効率的にセッティングしなければならない。段取りが大事である。
複数の資料をまとめてセットする場合は、特に段取りを気をつけなければならない。
資料の中に別の資料が紛れ込んだりしてしまうと、セッティング段階や会議中に混乱を招きかねない。
資料ごとに付箋を貼るなどの余裕と気遣いがあればよい。
⑥突発事象への対応
上級者編である。
会議が長引き、会議室の使用可能時間を超過しそうなことがある。
その場合、残りの議題と時間を見比べ、別の会議室を予約するか判断しなければならない。
会議の進捗状況を見つつ、ダメそうであれば、早めに新たな会議室を予約をしに行く必要がある。
他に、会議出席者が急遽増え、資料が足りなくなった場合に備え、すぐに印刷できるよう、印刷用資料をとっておくと良い。
上記は代表的な例であるが、担当者の気配りポイントは、会議の形態や出席者の状況に応じて無数に存在する。
①ー⑥をそつなくこなせるようになると、議題と出席者を見ただけで、どれくらいの会議時間が必要か想像できるだろう。
また状況を見極める力、段取りよく対応する要領も得られる。
前述の想像力、危機管理能力、仕事の要領が鍛えられるわけである。
これらの能力は、他の業務にも活かされる。
例えば、資料作りなら、相手の理解度を想像することで、相手が理解しやすいような資料構成にできるだろう。
また、危機管理能力の向上により、何事に対しても先回りして準備をすることができ、上司や同僚からの急な仕事の発注にも慌てて対応する必要がなくなる。
要領がよくなると、段取りがうまくなるので、プレゼンや説明のときも相手にわかりやすく説明できる。そして当然、仕事の能率もあがる。
若手ビジネスパーソンは、たかがロジだと思って甘く見てはいけない。
ロジは全ての仕事の基本である。