先日、ネットに美輪明宏氏のインタビュー記事が載っていたので読んだのだが、そこで美輪氏がこんなことを話していた。
若い俳優には、クラシックを聴けと言っている。
クラシックを聴いている人は、いかにもそういう雰囲気が身体から漂っているから。
美輪氏は、ロックを聴いている人にもそういう雰囲気が出ていると言う。
これはつまり、聴く音楽がその人の雰囲気を作るということだ。
しかし、果たしてこれは本当なのだろうか。
気になったので少し考えてみた。
そもそも人の雰囲気を作るものは何なんだろう。
我々は一人一人を見て、その人の雰囲気を感じている。
上品な人だなぁ、とか、優しそうな人だなぁ、とか。
その雰囲気は一体、どうやって生成されるのだろう。
雰囲気というのは、要するにその人の思考や性格といった内面の部分が外に現れたものだ。
誰に対しても優しくありたいと思っている人は、柔らかい雰囲気が出ているし、金に強欲な人はギラギラした雰囲気が出ている。
もちろん、服装や髪型、姿勢や所作でもその人の雰囲気がガラリと変わるが、こういったものは結局その人の内面の現れでしかない。
とすると、根源的な意味において、その人の雰囲気を左右するものを考えてみると、おおよそ以下なのではないかと思う。
①生まれつきの性格
②家庭環境
③友人
④教育
⑤体験・経験
⑥趣味
⑦宗教
美輪氏の言う、音楽は⑥に該当する。
これら六つの中で先天的なものは①だけだ。
夏目漱石の「坊ちゃん」ではないが、親譲りの無鉄砲という人もいる。
そういう人は常にピリピリした雰囲気をまとわせているだろう。
しかし筆者は、①よりもむしろ後天的な②ー⑦のほうが、その人の雰囲気により大きな影響を及ぼすのではないかと思っている。
生まれつきの性格はあるだろうが、その人の思考や性格の大部分は②ー⑦で決められるということだ。
実際、生まれつきの性格も、その後の人生で大きく矯正される。
人見知りだった子供が、多くの経験を通して物怖じしない大人になるように。
②ー⑦に共通しているのは、自分の内面からではなく、どれも外からの情報であるということだ。
つまり、雰囲気の大部分は、その人がそれまでにインプットした情報を醸成することによって作られるということだろう。
だから美輪氏は、クラシックを聞きなさいと言ったのだ。
クラシックを聴けばその旋律が体の中に流れ、自然と所作が優雅になり、上品な雰囲気が滲み出るのだろう。
ちなみに、筆者の妻も大のクラシック好きである。
言われてみれば、(我妻ながら)上品な雰囲気をもっている。
外に対しても、品がよくないと許せないという感じである。
そのせいで、上品の「じ」の字もない筆者は日々苦労している。