この世には難問と呼ばれる問題がいくつもある。
数学の問題でいえば、ミレニアム問題。
社会問題でいえば、環境問題や貧困問題。
国際情勢なら、米中の対立、イスラム国問題。
どれも解決に多大なる労力を要する代物である。
そんな中、筆者が密かに、これら問題に比肩するんじゃないか、いやもしかたら今やこいつらを凌駕してんじゃないかと内心ハラハラしている問題がある。
それはズバリ、
妻や恋人へのクリスマスプレゼント
である。
おそらく、世の男性諸君の半数以上は賛同の声を挙げてくれたに違いない。
いや四割。もしかしたら三割くらいかもしれない。
二割でも御の字。
困難さの度合はともかく、女性、特に大人の女性へのクリスマスプレゼントについて、多くの男性の考えはこうである。
何を買えば良いのか、さっぱりわからない。
これは本当にそうなのである。
一般的に、大人の女性は目が肥えている。
ここで言う大人の女性とは、仕事があり、ある程度自由に使えるお金がある三十代以降の女性のことを指しているが、彼女たちの多くは、既に自分の好き嫌いがはっきりしていて、財力があるから自分に似合うもの・欲しいものは一通り手に入れている。
それでいて、クリスマスや誕生日には何か心ときめくようなものを欲しがる。
妻もまさにこのような類の女性なのだ。
妻に関して言うと、輪をかけて厄介なのが、彼女は何か形に残るようなものをプレゼントされるのが好きで、さらにそのプレゼントを筆者に選んで欲しがっていることである。
筆者なんて、ただのしがない勤め人。プレゼントに割ける予算なんて限られているから、買えるものは限られている。
その上で、上述のとおりプレゼントの範囲を限定し、さらに内容を筆者のセンスに委ねるという始末。
ハードルを上げまくってくるわけである。
あまりにもハードルが高すぎて、ハードル走なのか高跳びなのか分からない。
言っておくが、もちろん筆者だって自分の妻の好みくらいはある程度はわかっているつもりである。
しかし、好き嫌いの激しい妻。
好きなもの以外は全く喜ばず、好みを外せば怒りが湧き上がってくるようなのである。
何度か彼女の望まないプレゼントをあげて「もっとよく考えて」と怒られたことがある。
一生懸命考えて選んだプレゼントを要らないと一蹴されたときの心の傷の深さを読者の方々はわかってくれるだろうか。
はっきり言って、トラウマになるレベルである。
つまり、筆者にとって妻にプレゼントをあげる行為は、とてもハイリスクなことなのである。
嗚呼、クリスマスなんて来なければ良いのに。
そんなわけで2018年のクリスマスプレゼントである。
何度も、「今年はあげないでおこうか」と思った。
そもそも妻からももらえる気配がないからである。
しかし、あげないならあげないで、彼女もがっかりするだろう。
せっかくのクリスマスなんだかから、できれば喜んで欲しい。
そんなわけで考えまくったのである。
まずはアクセサリー。今は欲しいものはないと言っていたのでボツ。
これがセンスのある男性ならば、「君にはこんなのも似合うよ」なんて言って、その女性がそれまで持っていなかったようなタイプのものをプレゼントして喜ばせることができるのだろうが、筆者が同じように買ったものは、大概妻の顔を曇らせるだけなのでボツ。
次にカバン。試しにブランドもののカバンを見に行ったら、ベラボーに高い。こんなカバンの何がこんなに高いのかと店員を問い詰めたくなるくらい高い。明らかな予算オーバーなのでボツ。
それではとカバン以外の小物。筆者の見立てでは、妻は必要な小物はだいたい持っている。それならばと奇をてらったものをあげると、上述のアクセサリーのような反応が返ってくるのでボツ。
筆者の貧困な想像力だと、形に残りそうなプレゼントなんか上述のようなものしか思い浮かばない。
そこで、考えあぐねた挙句、2018年のクリスマスプレゼントは、自分では買わないけれどもらえば嬉しいものをあげることにした。
「形に残るもの」という条件を緩和したのである。
いわば規制緩和。
それまでの規制だと、もうあげられるプレゼントがないわけである。
規制緩和することで、プレゼントの範囲が広がり、考えも活性化する。
やるべきことはやった上での緩和。必要に迫られての緩和である。
諸外国にとやかく言われる筋合いはない。
その結果、筆者が選んだプレゼント。
それは、
スヌーピーのアニメのDVDのセット
である。
妻がスヌーピー好きで、アニメ好きだったため選んだのであるが、結果から言おう。
惨敗。
包みを開けた途端、妻の表情がみるみる曇っていく。
「ありがとう」とは言うものの、全く嬉しくなさそう。
そして、しばらくして「子供っぽいよ」と苦笑い。
うん、そうだよね。
三十代半ばの女性へのプレゼントがアニメのDVDなんてね。
舐めてるよね。あはははは。
結果、プレゼントした側の筆者が平謝りするという奇妙な現象が生じ、クリスマスの夜は更けていったのである。
女性へのプレゼントは、シンプルに女性がほしいものを買うべきである。
この金言が、サンタクロースから筆者へのクリスマスプレゼントとなったわけである。