コロナのせいで禁酒をしていた。
飲み会がなくなったせいだ。
家では一切飲まない。
妻の機嫌が悪くなるからだ。
妻は、酒が身体に悪いと信じている。
どういう理屈なのかわからないが、結婚して数年、その思い込みを覆すことはできていない。
酒は百薬の長と言ってもわかってもらえないのだ。
そのため、飲みたければ外で飲むしかないが、子育てとコロナで、外で飲むこともできなかった。
しかし先日、夜一人になるタイミングがあった。
妻も子も家にいない。
よし、ビールを飲もう、と決意。
その日は飲む前からルンルンである。
つまみは、大好きな味玉子、ビールは少し高いものを購入。
コンビニで購入したのだが、飲みたかったエールは売っていなかったので断念。
次の日は朝早い。
酒に時間をかけていられない。
さっと飲んでさっと寝なければならない。
家に帰って、早速グラスにビールを注ぐ。
うまく注げた。
泡と液体のバランスが良い。
見た目は完璧。
泡が消えないうちに、ぐっと飲む。
三回くらい喉を鳴らす。
はー、と息をついてグラスを口から離す。
口の中に残ったビールの余韻。
しかし、首を傾ける。
そこまで美味しくない。
味玉子を一口かじる。
出汁が効いていてうまい。
安定の味。
もう一口ビールを飲む。
なんだろう。
苦い。
当たり前なのだけれど、それまで感じなかった苦さ。
初めてビールを飲んだ頃のような、慣れない感じ。
もう一口飲む。
驚いたことに、飲む度にビールがまずく感じる。
なんだろう、これは。
どうしちまったんだ、筆者の舌は。
数ヶ月禁酒をしていたせいで、舌が幼児返りしてしまったのか。
とにかく、その日のビールは全然美味しくなかった。
一人で飲んだからなのだろうか。
お酒は、みんなとワイワイ言いながら飲むのが楽しい。
あの楽しさにごまかされて、筆者は酒本来の味をわかっていなかったのだろうか。
だとしたら、もうしばらくはお酒を楽しめない日々が続くだろう。
筆者の楽しみは、まだ当分帰ってこない。