北斎の生き方が指針となる時代

六本木の森アーツセンターギャラリーで開催されている「新・北斎展」に行ってきた。

できれば妻と行きたかったのだが、あまり葛飾北斎に興味がない彼女。
仕方なく一人で鑑賞。

 

葛飾北斎といえば、江戸時代に活躍した浮世絵師である。
知っている人も多いだろう。

 

数年前に北斎の画を観て彼の絵に魅了された筆者。
以来、近くで北斎の展示があれば行くようにしているし、彼が特集された雑誌が出ればついつい買ってしまう。

北斎は肉筆画も版画も数多くの作品を残している。
有名どころは、肉筆画だと「鳳凰図」「弘法大師修法図」、版画だと「富嶽三十六景」等々。

非常に多作な作家である。

 

中でも筆者が好きなシリーズは、「北斎漫画」である。

北斎漫画とは、当時の風俗や生き物、自然等をスケッチした、その名の通り漫画絵のようなラフな作品をまとめた冊子(全十五編)である。

版画作品なので大量に刷られ、当時の江戸で大変流行したらしい。

これがなかなか見ていて面白いのである。

江戸の人々が裸で謎の競技で競っていたり、変顔を見せていたり、細い男と太った男が相撲をとっていたりとユーモアに溢れる作品が多く、見ていて飽きない。

大砲を発射する絵、そして次のページに大砲の玉が大魚に当たる絵があったりと、今のストーリー漫画のルーツになるような作品もある。

 

葛飾北斎の何がすごいのか。

画力、ユーモア、観察力、向上心。

様々な要素があるが、それらは全て「絵にのめり込む力」に集約されるのではないかと思う。

 

それを象徴するようなエピソードがいくつかある。

 

北斎は二十歳で絵師になってから、九十歳で死ぬまでずっと絵を描き続けた。
彼は死ぬ間際、彼は

「天があと五年私に命をくれたなら、必ずや本物の画工になり得ただろう」

と言ったとされている。

 

また北斎は生涯九十三回も引っ越したと言われている。

それは、絵に集中するあまり部屋がひどく汚くなり、そのたびに引っ越していたからだという。

 

思うに、彼の生き方にこれから我々が生きるためのヒントがあるのではないか。

 

つまりそれは、

「好きなことにのめり込む」

ことである。

AI、ロボットの発達により、現存する事務的な仕事の多くはなくなると言われている。

これから必要となリ得るのは、そういった事務的で味気ない仕事をこなすスキルではない。

何か特定のものを突き詰め、それを人に教えたり、突き詰めたもの(=新たな価値)を人々に提供する能力である。

 

その能力が求められる典型的な仕事が、近年人気を得ているYouTuberである。

「好きなことをして生きていく」

少し前に展開された広告のキャッチコピーは、まさに上記を体現したものである。

 

さすがに部屋掃除しないほどのめり込めとは言わない。

しかし、

自分が何に興味を持っているか、何をしたいのか

それくらいは自覚するようにしないといけない。

 

「何にも興味がなく、生きる気力がない」

そういう人が生きにくくなる社会が近くまで来ているような気がする。

 

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