妻に関して、もう少し書いてみようと思うのである。
もしこのエッセイに熱心な読者が存在するのであれば、その方は、前回の内容を読んで、妻の持つ問題が何かをわかってもらえたであろう。
しかし、筆者は危惧しているのである。
つまり、妻のことについて美化したような書きぶりになってしまったので、ややもすると、前回の内容を読んだ読者が、妻に味方してしまうのではないかと心配してしまったわけである。
今回も妻のことを書いてみるが、しかしその目的は、筆者が日々どれだけ大変な思いをしているかを知ってもらうことで、筆者に対する同情票を買おうという魂胆なのである。
我ながら浅ましいのである。
妻が、父親の寵愛を受けて育ったのは、前回書いたとおりである。
甘やかされて育ったせいで、妻はわがまま娘に育ってしまい、現在、そのしわ寄せが全て筆者に来ているわけである。
結婚して一番筆者の頭を悩ませたのは、妻がなかなか同居しようとしなかったことである。
結婚するまで、筆者は十年以上一人暮らしをしていた。
一方、妻は生まれてこの方、実家を離れたことがなかった。つまり、人生で初めて実家を離れなければならなくなったのだ。
しかし、筆者はちゃんと考えて、手を打ったのである。
妻は実家の隣にある市で働いているが、その市でアパートを借りたのである。
彼女にとっては勝手知ったる市なわけである。
妻の通勤時間は10分(筆者の方は1時間20分。)。彼女の実家から職場に通うよりも近い。
筆者が最大限譲歩したわけである。
しかし、妻はなかなか引っ越してこない。
毎日仕事が終わってから、アパートで夕食を作り、食べてから実家に帰っていくのである。
ちなみに、筆者が遠路はるばる帰ってくる頃には、彼女はアパートを出たあとである。
彼女に対して不信感が募っていくのを、きっと読者は理解してくれると思う。
しかし筆者は、ぐっとこらえるわけである。我慢なのである。
妻の言い分はこうなのである。
あなたは頼りにならない。なよっとしてるし、男らしくない。
車の運転だってしないし、どこか遠くに行く時はいつも助手席に座って、自分で運転しようかとも言わない。
頼り甲斐がないし、一緒に住みたいと思えない。
辛辣である。辛辣すぎて涙が出る。
確かに筆者は線が細いし、頼り甲斐のある見た目ではない。
それに、ずっと都心に住んでいたので車を運転する必要がなく、また倹約家でもあったので車を買うこともなかった。
免許は持っているが、完全なるペーパードライバーである。
一方彼女はマイカーを持っていて、10年以上、毎日車で通勤している。
運転技術は雲泥の差である。
彼女の運転に、筆者はいつも甘えてしまっていたのだが、彼女はそれが許せなかったわけである。
そこで筆者は思い切って車を購入した。
大きい車の方が運転技術が上がる、という彼女のアドバイスにより、SUVを選んだのである。
彼女の車を運転できればいいのだが、しかしその車は彼女のお気に入りで、特に筆者のようなペーパードライバーに運転されるのが嫌だったわけである。
彼女のお気に入りの車はそのまま。
すなわち、我が家は二台持ちになったわけである。
断っておくが、筆者は決して高収入ではない。
一人暮らしをしていた頃は、どうやって食費を抑えようかと考えていたくらいである。
車の購入費用は勿論、ガソリン代、駐車場代などの維持費に目が回りそうである。
しかも、毎日運転するわけではない。週末だけである。
倹約家の筆者が、どれほどの思いで購入したか、何人の読者にわかってもらえるだろうか。
しかし、妻は引っ越してこないのである。
妻の次の言い分はこうである。
実家で買っている年老いた猫が心配なの。
その猫は、彼女が中学生の頃から飼っていて、彼女自身、よく世話をしていたようである。
猫の体調が、その頃思わしくなく、嘔吐することがしばしばだったわけである。
猫の世話があるから、家を出られない、というのが彼女の言い分なわけである。
筆者は、ここでもまた、言いたいことを飲みこんで、ぐっとこらえるわけである。
ここまで読んだ読者の中には、きっとこう思う人もおられよう。
ぐだぐだ言ってないで、無理やりにでも連れて行けばいいのに。
妻の親は何をしてるんだ。親が追い出さないとダメじゃないか。甘やかしすぎだ。
そんなことは、百も承知である。
筆者も義理の母親もわかっているのである。
しかし、二人が言っても聞かないのである。
彼女の感情が高ぶって、大暴れするのである。一種のヒステリーである。
家の中のモノを壊すのは日常茶飯事。
筆者に至っては、殴られたし、噛まれもした。
手がつけられない状態になるのである。
なんて女性と結婚したんだ。
筆者が呆然としたのは言うまでもない。
頭をかかえながら、日々を過ごしていたわけである。
ずいぶんと長くなったので、この続きはまた次回に。