ここ半年ほど、一軒家を探していた。
子供が生まれ、住んでいるアパートが手狭になってきたからだ。
しかし、探せども探せども、いい土地が見つからない。
ネットで見ていいかも、と思っても既に売れていることもしばしばあった。
コロナの影響で、戸建ての需要が高まっていたのだ。
そんな中、希望に沿う分譲地が売り出される、という情報を得た。
駅近で、小学校も近い。
ほとんどの区画は小さいが、一つだけ、広さの割に、かなり手頃な土地がある。
日当たりも確保できそう。
妻の希望で日当たりは絶対条件だった。
これだ、と思い、資料を取り寄せる。
競合するだろうな、と思っていたが、希望者が複数いる場合は、抽選があるらしい。
完全に運。
だが、公平なやり方だ。文句はない。
不動産会社と連絡をとり、建物の要望を伝える。
すると、二、三日で、美しい外観や間取り、見積もり案が出てきた。
仕事の早さにびっくりする。
しかし、抽選になれば、この労力は徒労に終わる可能性もあるのだ。
聞けば、他に4組ほど、同じ区画を希望している人がいるらしい。
倍率5倍。
絶望感しかない。
妻に伝えると、それまで乗り気だった妻のやる気が一気に失せてしまった。
とはいえ、当選の可能性もあるのだから、手を抜くわけにもいかない。
幸運を引き寄せるコツは、とにかくチャンスに挑むことだ。
できることを一つ一つ積み重ねた先にしか、幸せはない。
希望していた区画は、やはり、一番人気とのことだった。
他の区画に比べ、坪単価が低いだからだろう。
土地の形が綺麗ではなく、道路から奥まっているのだが、それさえ気にしなければ、ゆったりとした家を建てられる。
いい家に住みたい。
その一心で不動産会社との打ち合わせを何度も重ねた。
建売りの家にも見学に行き、仕様に反映させようとした。
そして、ついに抽選当日がやってきた。
(続く)