家を買う②

土地の抽選から契約日まで、二週間ほどしか期間がなかった。

 

契約日は、不動産会社があらかじめ設定していて、よほどのことがない限り変更は難しいようだった。

詳しくはわからないが、当選した人が「やはり契約しない」となった場合に、いろいろ混乱するから、なるべくその影響を小さくするために、そうしているようだ。

 

だが、客側とすれば、契約までの短い期間で大まかな家のイメージを描かなければならないから大変だ。

 

とりえあえず、妻と筆者の要望を伝えて見積もってもらったところ、目が飛び出るような額になってしまった。

欲張りすぎたのだろう。

自覚はある。

 

ここから頑張って削らなければならない。

 

だが、抽選の数日前の時点で、筆者の希望する区画の倍率は5倍。

その作業は、徒労に終わる可能性が高い。

仕事も子供の世話もある中で、それをやる気力はない。

妻も、育休から復帰したばかりなので、疲れ果てている。

 

とりあえず、抽選は、このまま臨もう。

当選したあとのことは、そうなったときに考えよう。

そう割り切ることにした。

 

そして、抽選日当日。

 

不動産会社には筆者一人で行くことになっていた。

この日は抽選だけなので、家族で行く必要はない。

 

少し早めに家を出て、近くの神社で神頼み。

義理の母やらも激励のメールをもらう。

 

しかし、気負ってもしょうがない。

当選したらラッキー。記念受験のような感覚。

それよりも、抽選後の昼食に何を食べようか、と思い巡らす。

 

不動産会社に到着。

黒を基調とした綺麗な事務所に緊張感が高まる。

 

会社にとって一大イベントなのだろう。

関係者が何人もウロウロしていて、皆表情は硬い。

 

いつもの担当者に挨拶をして、待ち合わせスペースに案内される。

感染対策もあるのだろう。

他の希望者に顔を合わせることもない。

 

筆者だけ、吹き抜けのスペースに通されたのが気になった。

他の人は、個室にいる。

なんだろう、この扱いの差は。

もしかして、もう当選者は決まっているのではないか。

このイベント自体、出来レースなのではないか。

にわかに疑心暗鬼になる。

 

抽選前に担当者と話し、そこで区画希望の最終確認を受ける。

希望する、と回答。

 

すると、担当者から意外な回答が。

 

抽選は、二人での競合になりそうです。

 

え、他の三人は?

担当者が言うには、他の区画でも希望する家を建てられると判断してそちらに希望を変えた、とのこと。

 

確かに、それができるなら、コスト的にそちらの方がよい。

 

拍子抜けしてしまった、と同時に、「当選」が現実味を帯びてくる。

 

当選確率が、20%から50%に跳ね上がったのだ。

 

 

鼓動が、早まるのを感じた。

 

(続く)

 

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