新人の魔力

春である。

桜はとっくに散り、四月の中旬になると日差しも強くなってきた。

 

四月といえば、新生活、新年度等、いろいろあるが、社会人になって十数年も経てば、そんなものはあまり気にならない。

いい意味でも悪い意味でも、年々フレッシュさが失われていく。

さて、今の筆者にとっては、四月のイベントといえば、

自動車税の納付

 

そして、2年に一度やってくる

車検

 

である。

 

車を持っている人ならわかるだろうが、これらにかかる費用がバカにならない。

自動車税、車検等の費用を合算すると10万円近くかかってしまう。

2年に一度、この悪魔の季節がやってくるのである。
(ちなみに、自動車税は毎年の支払いである。)

この車検の費用を捻出するために、筆者は日々節約に励んでいると言っても過言ではない。

これら諸経費が安くなれば、もっと車が売れるのに、と思うのだが、国のエライ人なんとかなりませんか。

 

というわけで、先日、車検の予約を取るため、某大手カー用品店に電話を掛けた。

はっきり言って、全然気が進まない。

筆者は週末ドライバーだし、滅多に遠出もしない。

車もそんなに古くないから、きっと悪いところなんて見つからないだろう。

なのに、なんでこんな高い額を払わないといけないんだ。

 

と心の中でブツブツと心の中で呟きながら呼び出し音を長い間聞かされ、ようやく店員が電話に出た。

店内の雑音をバックに、元気な女性の声が聞こえてきた。

 

「はい、◯◯◯◯(カー用品店名)。新人の田中(仮名)です!」

 

え、新人。

思わず笑ってしまった。

そんな情報、わざわざ言う必要あるか?

そう思いながら、車検の予約をしたい旨伝える。

「はい、車検ですね」

そう言って、彼女は車の車種を尋ねたり、日にちの案内をしてくれた。

新人らしく、たどたどしいが、ハキハキとしていて嫌な感じはしない。

いや、むしろ好感を持てるくらいである。

筆者にとって初めての車検だったので、車検時間や代車の用意についても聞いてみた。

すると、

 

「すいません、私新人なんで、ちょっとわからないですね。調べて、また折り返しお電話してもよろしいでしょうか」

 

またも、新人。

正直、いい接客とは言えないが、「新人だから」と堂々と言われると、「仕方ないか」という気持ちになる。

新人力、恐るべし。

結局、車検は一日で終わり、代車も借りられるようだったので、そのまま車検の予約をした。

 

今回わかったのは、接客において新人をアピールすることは、一つの武器になること。
(ただし、新人らしく、ハキハキとしている必要がある。)

 

そして、昔だったらイケてない接客にイライラしていたのに、今では落ち着いて対応できるようになった、筆者自身の精神の成長。
(ただし、店員が男だったら、どうだったかわからない。)

 

春は、いろいろな事を気づかせてくれる季節である。

 

さて、電話を終えてふと思ったことがある。

 

今回予約をしたのは、四月の中旬だったが、大手企業の場合、四月は新人にとっては研修の時期のはずである。

現場に出ることは滅多にない。(もちろん、企業に依る。)

 

筆者が対応してくれたのは、本当に新人なのであろうか。

まさか、不出来な店員を、新人として名乗らせていたのでは。。。。

 

 

 

 

新人、という言葉の魔力を感じた一件であった。

 

 

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