筆者がビートルズファンであるのを抜きにしても、この映画はよかった。
何より、物語の核となる世界観が面白い。
もしビートルズの存在しない世界に迷い込んだら?
シンプルだが、わかりやすい。
ただの音楽好きなら、「もうレットイットビー聴けねえのかよ」と
肩を落として終わるだけだろう。
しかし、この映画の主人公である青年ジャックは違った。
プロのミュージシャンを目指す彼は、事故で気を失った後、
世界からビートルズの存在が消えたことを知るや、これをチャンスと捉え、
彼らの曲を自分の曲と偽って売れようとする。
そして実際、めっちゃ売れる。
ビートルズの曲を次々とリリースして、天才ともてはやされる。
名曲揃いなのだから当然だ。
このジャック演じるヒメーシュ・パテルという役者。
決してイケメンでないが、歌はそこそこ上手い。
映画中、ギターも生で弾いているらしく、
ビートルズファンとしては、名曲を堪能できて嬉しい。
しかし、このジャック、本当にイケメンではないし白人でもないのだが、
彼本来の人間性が役に出ているのか、彼が振り回される様は、コミカルで面白い。
そして全然イケメンでもないのに、エリーという幼馴染のめっちゃ美人に、
本人曰く「人生の半分」も片思いされていて、ありえないほど羨ましいのだ。
ちなみにこのエリー。
ディズニーの実写映画「シンデレラ」でシンデレラを演じた、リリー・ジェームズである。
本当に美人で、筆者など映画中ずっとエリーに夢中だった。
正直なところ、「エリーがこの映画の主人公だったら、もっと彼女を見られたのに」
と思うほどだった。
だがその場合、彼女はミュージシャンでもないので、
「ビートルズいないのも仕方ないわね。ああもう、それより教師って大変」
てな感じの映画になりそうで、それも嫌なのだが。
※教師はエリーの職業
ここからネタバレになるので注意。
ジャックは、売れたことでエリーとの距離が遠くなったこと、他人の曲で売れたこと、
世間に注目されるストレスに悩む。
そして最終的に、自分の曲がオリジナルではないことを世間に明かし、
プロのミュージシャンを辞めてエリーと一緒になる。
この映画、上記のとおりハッピーエンドなのだが、
夢オチで終わらないのもグッドポイントだった。
つまり、ビートルズがいない世界を最後まで描き切ったのだ。
非現実の物語を、破綻させずにハッピーエンドへと導く。
物書きを目指している筆者には、この難しさが痛いほどわかる。
この映画は、エリーの美しさだけでなく、脚本も素晴らしいのだ。