公開したばかりの「テネット」を観てきた。
監督はクリストファー・ノーラン。
同監督作の「インセプション」に衝撃を受けた筆者は、昨年から流れていた今作の特報に心躍らせ、公開を心待ちにしていた。
そしてこの秋とうとう公開。
スキップらんらんの気分で、乳飲み子を抱えた妻から批判されるのを覚悟で、一人で観に行った。
しかし。
そんなリスクを抱えて観に行ったにもかかわらず、撃沈した。
観終わったあと、とてつもない消化不良だった。
「インセプション」以上の消化不良感。
断っておくが、面白い作品だし、むちゃくちゃ斬新な作品であることは確かだ。
これは間違いない。
ジャンルとしては、スパイ映画であり、またタイムトラベルものの一種なのだが、普通ではない。
タイムトラベルならタイムマシンを使って一瞬で過去に行くが、そうではなく、時間を逆行して過去に遡って行く。
だから、過去に向かう途中、その人は普通の時間軸から観ると、巻き戻し再生されたような動きになる。
こんな動きをした人物と通常の時間軸を進む人物とのアクションがあったりして、それ自体とても斬新だし、観ていてめちゃくちゃ面白い。
しかし。
ストーリーが難解すぎるのだ。
そして、時間が逆行する現象について、そのからくりに対する説明が少なすぎる。
そのため、観ていて不可解なシーンが何個も発生し、そのどれもが消化不良のままストーリーが進んで行く。
おいてけぼりを食らわないように集中して見るのだが、そういったシーンが多すぎて、徐々に諦めモードになっていく。
最後に全ての真相が明かされるのだが、それまでの不可解さが多すぎて、振り返ってみても消化しきれず、「なるほど!」とスッキリしないのだ。
ストーリー展開が早く、途中で飽きることなく観れるのだが、その早さ故、一つ一つを理解しきれない。
だから、
「どういうからくりで、そうなるんだ?」
とか
「それってなんかおかしくない?」
といったことが頻発して、ストレスもたまる。
これはもう、確実に二回以上観ることを前提に作られた映画である。
となれば、もう一回観るしかないだろう。
妻よ、すまん。
そもそも、この作品が他の作品と同じ値段で観るべきものではないと思う。
本物のジャンボジェットを破壊したり、予算的にも規格外の作品なのだ。
感覚的には5000円分くらいの映画のような気がする。
二回、三回くらいかけて観るべき映画だろう。
たぶん、これがノーラン監督の戦略なのだ。
これから観ようと思っている人は、二回以上観ることを前提に観た方が良いと思う。