タイムパフォーマンス、略してタイパ。
いかに短時間で利を取るか、ということだが、
昨今は、映画や書籍でもタイパを求める人向けのコンテンツが溢れているらしい。
映画のシーンを切り抜いたファスト映画と呼ばれるものや、
書籍に記載のエッセンスを抜きだした「〇分でわかる『××』」等(『』の中は有名な書籍名)。
そういったコンテンツを求める人は、その作品の要部だけを知りたいのだろう。
それを自分の知として蓄積し、他人とのコミュニケーションに生かす。
何せ、今の世の中にはコンテンツが溢れているのだから、
そうでもしないと流行に追いつけない、というわけだ。
時代の流れとして致し方ないという思いはある。
しかし、物書きを目指す人間としては無視できない。
自分が何ヶ月もかけて作成した作品が編集され、ものの数分で「消費」されてしまうのは悲しい。
そもそも、作品に触れる目的が変化してきているのだなと思う。
筆者の場合、映画や小説に触れる理由は、作品中の主人公が歩む人生を追体験したいからだ。
登場人物がその時々で感じたこと、とった行動について考え、自らの人生経験の一部とする。
行ったことのない国や地域、コミュニティの文化に触れ、視野を広げる。
作品の中で起こる問題を、自分の身に置き換えて考えてみる。
作品に感情を揺すぶられ、目の覚める思いをする。
文化的・芸術的作品というのは、本来そういうものだと思っている。
それが、単なる「情報」として扱われているのが、現代の風潮。
タイパにどっぷり浸かっている人は、自分の幼い頃を振り返って欲しい。
好きな絵本や小説、アニメに夢中にならなかったか?
その登場人物に一喜一憂し、彼らに自分の姿を重ね合わせなかったか?
面白くて、何度も何度も読み直さなかったか?
その頃得たものが、今のあなたの土台を作っているはずだ。
時代の流れを無視して、厳選した作品に時間をかけて触れてみよう。
そういった蓄積が、あなたの人生をより豊かにするはずだ。