期待値で考えよう

先日車に乗ったときのこと。

ディスプレイに警告ランプが点灯しているのを発見。

タイヤの空気圧が異常値を示すランプである。

 

何事かと思い、すぐに行きつけのカー用品店に持って行くと、

後輪に何かが刺さってそこから空気が漏れているとのこと。

 

つまりはパンクである。

 

車を買ってもう2年半になるが、パンクは初めてのことだ。

車の製造は2012年。

それを5年落ちの中古車で買ったのだが、タイヤは2012年から一度も取り替えられていない。

つまり、タイヤは7年ものになっているとということだ。

 

走行距離は長くないので、タイヤはそれほどすり減っていないが、

経年劣化によるひび割れが深刻になっているのには気づいていた。

タイヤ交換は3年に一度が推奨されているところ、

その倍の期間換えていないのだから仕方ない。

 

痛い出費だなとため息をつく。だがいつかは換えないといけないのだ。

これから子供も生まれて出費がかさむのになぁ。

 

そんなことを考えていると、店ののぼりが目に飛び込んできた。

 

タイヤ20%OFF!

 

これはまさに渡りに船。神の啓示。

タイヤ担当だという感じの良さそうな店員と相談し、

思い切ってタイヤ4本全てを交換してもらうことに。

だがセール中とはいえ、値段は工賃込みで二桁万円を突破。。

痛すぎる出費である。

 

何かと物入りなのに。。

FXでは赤字を垂れ流すばかりなのに。。

 

さて、その店員。

今度は笑顔でタイヤの保険をしきりに勧めてくる。

6000円払えば、3年間タイヤの修理費を10万円まで保証するという保険だ。

それまでは考えたこともなかったが、自分の身にもパンクという災難が降りかかり得る

ということは身にしみてわかった。

 

はてさてこの保険に入るべきがどうか。

 

 

さて話は変わるが、筆者は最近期待値の勉強をしている。

期待値の詳しい解説は数学者に譲るが、要するに、

あるイベントに参加することにより期待できる恩恵(値)のことである。

 

うん、とっても分かりにくい。

 

例を出そう。

あなたは友人からあるゲームをやらないか、と誘われたとする。

そのゲームとは、あなたがサイコロを1回振って、1−5のいずれかが出れば300円

貰えるが、6が出れば1800円を友人に払わなければならないという制約で、

サイコロを10回振るというゲームだ。

 

さてこのゲーム、やるのとやらないのはどちらが得だろう?

 

そこで期待値の登場である。

サイコロ1回あたりの期待値をpとすると、サイコロの1−5が出る確率は5/6、

6が出る確率は1/6だから、

 

p = 5/6 * 300 + 1/6 * (-1800) = -50

 

サイコロは10回振るから、このゲームの期待値Pは、

P = 10 * p = -500

つまり、このゲームに参加して得られると予想できる金額は -500円、

すなわち500円の赤字である。

 

ここで注意したいのは、このサイコロ一回あたりの期待値pは、

サイコロを無限回振った際の平均的な値であるということである。

 

一回あたり平均的に貰える金額が-50円なのだ。

もしあなたが学生、あるいは小遣い制のサラリーマンだったとしたら、

このゲームに参加すると、昼食一回分を失うことになるだろうからやめておいたほうが良い。

 

このように、期待値を身につけておくと、利益や損失が発生するイベントへの

参加が得なのか損なのかを判断するのに役に立つのである。

 

そして話は、タイヤ保険に加入すべきかどうかに戻る。

 

これも期待値で考えれば良い。

 

次にタイヤを交換するであろう3年間で、タイヤ1本がパンクする確率をAとする。

今回はセールだったが、通常タイヤの交換料金は、タイヤの価格と工賃合わせて

タイヤ1本あたり30000円。

保険は6000円で3年間10万円まで保証してもらえる。

 

なお、単純化のため、ここではタイヤがパンクし得るのは1本だけという前提で考える。

 

この保険に加入した場合に支払う金額の期待値Pは、

保険料だけ(パンクしても保険により費用が賄われる)だから

 

P = 6000

 

6000円である。

 

一方、この保険に加入しなかった場合に支払う金額の期待値Qは、

タイヤがパンクした時にだけ費用が発生するから、

 

Q = 30000 * A + 0 * (1 – A) = 30000A

 

6000円と30000A円。当然ながら、このままではどちらが得かわからない。

 

しかし、30000A円が6000円よりも小さくなるAの値、

つまり保険に加入、非加入における損益分岐点を求めるとどちらが得か見当がつきやすい。

 

この場合、損益分岐点は、

 

30000A = 6000

 

となる場合である。

 

Aを求めると、

 

A = 1/5 = 20%

 

要するに、この20%を境に、保険への加入が得か損か決まることになる。

3年以内にパンクする確率が20%よりも大きければ、保険に加入したほうが得であり、

20%より小さければ加入しないほうが得なのである。

 

なお、実際はタイヤが2本、3本、4本パンクする場合も含めて

損益分岐点を考えなければならない。

この場合は計算式が複雑になるので省略するが、損益分岐点は15%程度になる。

(なお計算は、四次方程式を用いる必要があるので、筆者も某ホームページで計算した。)

 

大まかな計算をするには、単純化したモデルで計算したほうが良いので、

ここでは20%を基準に考える。

 

さて、3年以内にパンクする確率。あなたは20%以上だと思うだろうか。

(5%の誤差が気になる人は15%以上と読み替えて欲しい。)

 

20%だと、5人に1人の割合である。

筆者の周りには車の所有者が何人もいるが、ここ3年でパンクを経験したと言う人はいない。

というか、筆者のこれまでの人生で、タイヤがパンクしたという人に出会ったのは

数人しかいない。

(これは、筆者の交友関係のせいかもしれないが。)

 

加えて、筆者は週末ドライバーであり、年間走行距離も1万キロに満たない。

 

筆者がパンクを経験する確率は絶対に20%より低いはずである(それも大幅に)。

 

というわけで、筆者はこの保険に加入しなかった。

 

 

 

・・・とキリッと言ってはみたが、上記の期待値の計算を店舗でできたわけではない。

 

カー用品店に行ったのは既に夕方で早く帰りたかったし、店員が笑顔で「保険に加入しろ」と

プレッシャーをかけてくる中、必死に勘を働かせて加入を見送ったのである。

店を出た後、「こっちの方が得だったよな、そうだよな」と自分に言い聞かせ、

家に帰って必死に計算してみてホッとしたのである。

(大体こういう保険は店側が得をするようにできているのだから、加入しないのが得策だ。)

 

 

さて、ここまで書いたところで気づいた。

 

冒頭にも書いたが、筆者が車を購入して2年半・・・

 

あれ、3年以内にパンクしてるやん。。。

 

うん、次の3年はきっと大丈夫。。。

 

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