大人になると、もう歳をとりたくない、と思うものだ。
筆者も、子供の頃はあれだけ待ち遠しかった誕生日が、25歳を超えたくらいから、全く嬉しくなくなった。
いつまでも若くいたいと思うからだろう。
それなのに、加齢は止まらない。
年齢を重ねると、気持ちまで歳をとったような感じがして、余計に老け込んでしまいそうになる。
だが、もっと歳をとると、また違った感情が芽生えてくるらしい。
70歳を超えた妻の母は、毎年誕生日が来るたびに、この一年も元気でいられてよかった、と思うらしい。
誕生日に対して、再びポジティブな感情を持つようになるというのだ。
しかし、逆に、周りの人間は、老人に対して歳をとってほしくないと思う。
怪我や病気をせず、いつまでも元気でいてほしい。
そう思うのではないだろうか。
親が年老いていくのを見るのは悲しいものがある。
なんともいえない悲しさだ。
あれだけ元気だった親が、いつしか頭に白いものが混じり、それがどんどん増えていく。
会うたびに、皺が増え、背丈も縮んでいる気がする。
記憶力も低下し、活力もなくなり、反応も鈍くなっていく。
子供の方も、親に対する尊敬や畏怖の念はいつしか薄れ、逆に慈愛を注ぐ対象になっていく。
立場が逆転するのだ。
親も、過去に同じような経験をしてきただろう。
そういうことを繰り返して、世代は移ろいで行くのだ。
もうすぐ母親が古希になる。
遠方にいる母には、しばらく会っていない。
コロナウィルスのせいで、もうしばらく会えないだろう。
母には何か記念になるものを贈ろうと思う。
感謝と労いの念を込めて。