妻自身、独身時代から愛用している車がある。
ツードアで車高も低く、非常に運転しにくいのだが、デザインが気に入っているということで結婚後も愛用し続けていた。
だが結婚して筆者も車を所有すると、妻が普段運転する車は、筆者の車に徐々にシフトしていった。
妻が運転するのはほとんどが通勤なのだが、いつしか職場の行き帰りでさえ筆者の車を使うようになっていた。
そうなると、筆者に不満が溜まっていくのは当然だろう。
車にかかるお金もバカにならないのだから、早く自分の車を処分すればいいのに。
そう思っていたが、妻は頑として聞かない。
とにかくその車が好きで手放したくないのだ。
妻が頑として聞かないときは、もうどうしようもない。
車の処分はあきらめていた。
子供が誕生して産休に入ると、妻はほとんど車を運転しなくなった。
運転する機会はあるのだが、それはチャイルドシートがついている筆者の車。
妻の車は、ツードアのため子供の乗り降りが難しいのだ。
筆者は、妻の車を運転しない。
運転しにくいし、自動車保険は所有者だけが対象になっているから、万が一の事故の時、保険がおりないからだ。
そのため、妻の車は何ヶ月も放置されることとなった。
そんなある日、妻が言い出した。
「自分の車を運転する機会は、これからもあまりないと思う。でもあの車を処分なんてできない。ただ今のままだと駐車場代もかかるから、車を実家の駐車場に移動させようと思う」
先に述べたとおり、筆者は妻の車を運転できない。
だから、まだ子供と実家で生活する妻を一度筆者の家に連れてきて、妻が自分の車を運転して帰ることになった。
駐車場代がかからなくなるのは嬉しかったが、筆者には一つ不安があった。
車のバッテリー、あがってないだろうか。
妻からは、バッテリーがあがらないように、ときどきエンジンをかけるように言われていた。
しかしものぐさな筆者。ついつい先延ばしにしてしまう癖がある。
妻が車を運転しなくなってからの4ヶ月間で、エンジンをかけたのは一度だけ。
前にエンジンをかけてから2ヶ月以上空いている。
妻が車を取りに来るのは明日と言っている。
その日妻の実家から帰宅した筆者は、急いでエンジンをかけてみた。
セルモーターがキュルキュルと音を立てるだけで、一向にかからない。
ネットで調べてみる。
バッテリー上がりの典型的な特徴だ。
さあどうしたものか。
修理に出している時間なんてない。
焦りながらさらに調べると、別の車からバッテリーをつなぎ、電力を分けてもらう方法があることが判明。
車二台持っていてよかった。
そんなことを思いながら、急いでカー用品に行き、ブースターケーブルを購入。
慎重に説明書を見ながら、人生で初めてボンネットを開け、二つの車のバッテリーをケーブルでつなぎ、筆者の車のエンジンをかけてしばらく待つ。
そして、妻の車のエンジンをかけてみる。
緊張の一瞬である。
これでかからなかったら、妻に怒られるのは間違いない。
エンジンキーを回すと、、、
かかった。
フオンフオンと唸り声をあげて排気ガスを出している。
よかった。ホッとする筆者。
あとは一時間ほどエンジンをかけっぱなしにしておくだけで充電は完了である。
翌日車を取りに来た妻も、何事もなく運転できた。
運転に違和感もなかったようだ。
ネットをみると、バッテリー上がりが発生したあとは、一度車の点検をしてもらったほうがよいらしい。
それが心配だったので、
「長いこと放置していたから、一度車屋さんに見てもらったほうがいいよ」
と優しさを見せつつ妻に言うと、翌月車検だとのこと。
これでバッテリー上がり隠蔽の完全犯罪は成立である。
本当によかった。。