映画「グリーンブック」を観て

先日公開された映画「グリーンブック」を観てきた。

本当は「翔んで埼玉」を観たかったのだが、都合のいい時間は全て満員。
恐るべし「翔んで埼玉」。

ただ「グリーンブック」も、アカデミー賞授業というニュースを観て興味を持っていたので、ポジティブな変更である。

アカデミー賞に踊らされている筆者。

 

さて映画の感想であるが、文句のつけようがない。
いい映画であった。

 

あらすじをざっと紹介する。

 

舞台は1960年代のアメリカ。黒人差別が色濃く残る時代。

当時は黒人が利用できる店が限られており、それらをまとめた雑誌「グリーンブック」が旅行者に重宝されていた。

 

ニューヨークで暮らすイタリア系アメリカ人トニーは、腕っ節とハッタリで周囲から一目置かれる存在。

しかし、働いていたレストランの改修工事により職を失う。

職探しをしている中、出会ったのが黒人ピアニストのシャーリー。

 

シャーリーは演奏仲間とともにアメリカ南部に、三ヶ月の演奏ツアーに出かける計画中のところ、運転手を探していた。

トニーを見込んだシャーリーは、彼を運転手(兼、用心棒)として雇う。

当時、特に南部では黒人差別がひどく、シャーリーが街を出歩くだけで様々なトラブルに巻き込まれるが、トニーが持ち前のハッタリと腕っ節で解決していく。

そして、三ヶ月のツアーを経てニューヨークまで戻る。

 

事実に基づく話である。

 

以下、一部ネタバレ部分も含むので、注意いただきたい。

 

 

 

 

 

 

 

この映画の何が素晴らしいかというと、黒人差別という重いテーマを、ユーモアをうまく交えてエンターテインメントとして昇華させているところである。

そしてそのユーモアの根源が、トニーとシャーリーのキャラクターのギャップ。

 

トニーは、ガサツで短気。貧乏で手癖が悪く、カッとなるとすぐに手が出るが、楽観的、人想い・家族想いで憎めない男。

そんなトニーが、繊細で真面目、金持ちで内向的なシャーリーと交わる。

二人の人間性・バックグラウンドの違いから様々な衝突を生むのだが、その様がなんとも愛らしい。

 

特に、トニーが愛する妻に書く手紙を、シャーリーが面倒を見る一連のくだりは、ほっこりするし笑える。

トニーとシャーリーが心を通わせるうまい演出だし、最後のオチにまで効いてくる重要なファクターである。

 

お互い見た目から心まで全く正反対の二人だが、しかし実のところ根本では通ずるところがある。

トニーはイタリア系アメリカ人。白人であるが、物語中も「イタ公」と言われ、決してアメリカ社会に馴染んではいない。

生活も苦しく、社会の上位層にいるはずの「白人」からは外れた存在である。

一方のシャーリーも黒人でありながらピアニストとして名声を得、それ故黒人社会に馴染めず、白人からも差別される。

お互いはみ出し者の二人だから、最終的には理解し合い、友人の関係になれたのだろう。

 

一部シャーリーの性的指向など、あえて触れる必要がない要素もあったように思えたが、事実だったのだったら文句も言うまい。

 

音楽も素晴らしい。

特にシャーリーが場末のパブでショパンを弾く場面は、そのテクニックもさることながら(俳優の指使いがすごい)、シャーリーの想いも伝わって心にグッとくる。

 

とにかく素晴らしいヒューマンドラマで、皆にオススメできる映画である。

 

 

しかしこの映画、一番驚いたのは、エンドロールだった。

トニー役が、あの「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルン役である、ヴィゴ・モーテンセンだったのだ。

 

あのワイルドでイケメンだったアラゴルンからは似ても似つかない肥満体型と老け顔のトニー。

 

あとで調べると、この映画のために20キロほど増量したそうだ。

 

「俳優ってすごい」の一言である。

 

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