二十代前半で、小説家になりたいと思い、書くことを始めた。
昔から文章を書くことは好きだった。
その中でも小説というのは、自分の想像した世界を具現化できるものだと気付いた。
書くことに夢中になった。
何作かの作品を書き上げ、賞にも応募した。
だが箸にも棒にもかからなかった。
次第に、自分の才能を疑い始めた。
プロットを考え、書き始めるも途中で飽きて投げ出す。
そういうことを何度も繰り返した。
辛抱強さもなくなっていった。
そして、そういう自分が嫌になって筆を遠ざけた。
その後結婚し、子供が生まれ、コロナ禍の生活も経験した。
仕事や妻との関係で辛い経験し、壁を乗り超えようと多くの書物を読んだ。
徐々に、自分自身の人格というものが熟していくのを感じた。
人間の弱さや、生きること、人間社会について、自分なりの思想も生まれるようになった。
また、このエッセイを書くことを通して、書くことの楽しさを再認識した。
そんな折、自分が書くべき小説の題材に気づいた。
今の仕事に関係する題材。
あまり手垢のついていないものだった。
それに気づいた時、これで何冊か小説を書けると確信した。
嵐の海で、進むべき灯台を見つけたような感覚。
それ以来、小説の書き方に関する本を読み始めた。
幸運なことに、おそらく一生読み続けるであろう本にも出会った。
再び筆をとるタイミングは今しかないと感じた。
以来、小説を書いている。毎日欠かさずに。
結局、積み重ねるしかないのだ。
自分がプロの小説家に値する人間かは、わからない。
だが、積み重ねた先にしかその答えはない。
小説を書くことに宿命を感じているのだから、日々書くしかない。
それしかない。
できることを毎日繰り返す。少しずつでも。
仕事や妻との関係で苦しみ、日々試行錯誤を繰り返した経験から得た真理。
少しずつしか進めない。
自分は天才ではないのだから。