映画『マチネの終わりに』を観て

邦画はほとんど観ない筆者だが、妻に勧められて『マチネの終わりに』を観てきた。

 

妻はすでに友人と観ていたのだが、

映画中にギターで奏でるクラシック曲が良かったということで、

ギターを練習しているんだったら絶対観た方が良いということ。

 

こう言われたら観に行かざるをえない。

あくまで筆者の解釈だが、これは推奨でもなんでもなく、半ば強制のようなものである。

観に行かなかったら、「せっかく勧めたのに」と言って機嫌が悪くなるのだから。。。

 

さて、とにもかくにも観に行ったのでその感想を書こう。

 

いつもの通りネタバレを含むのでご注意を。

 

 

 

 

原作は平野啓一郎の同名小説。

 

原作は未読であるが、先日著者の別著書を読んで、スローリーディングの大切さを学んだ。

スローリーディングについては、過去のエッセイでも触れている。

 

この著書にて著者は、

 

自分の作品はスローリーディングされることを前提に書いている

 

と述べている。

 

つまり、一行一行、この表現は何を意味するのか、ここでの登場人物の行動の意味は何か、

をじっくりと考えながら読む必要があるということだ。

 

というわけで、映画もそのつもりでじっくりと注意深く観た。

 

ストーリーをざっと書いておく。

ネタバレを含むので注意いただきたい。

 

 

 

 

福山雅治演じるクラシックギタリストの聡史と、石田ゆり子演じるジャーナリストの洋子。

初めて会ってすぐ二人は惹かれあい、二度目に会ったときに聡史は洋子にプロポーズする。

婚約者のいた洋子は、婚約を破棄し聡史と一緒になろうとするが、

聡史のマネージャである早苗に邪魔されたことがきっかけで二人の関係は終わりを迎える。

 

四年後、聡史は早苗と結婚し、子供をもうけていた。

ギタリストとしての活動を休止していた聡史だが、

師匠の死をきっかけに活動再開を決意する。

再起の地はニューヨーク。そこは、洋子が新しい生活をしている場所だった。

自責の念に駆られた早苗の告白により、

四年前の出来事はお互い悪くはなかったことを知る聡史と洋子。

 

そして、ニューヨークでの公演後、二人は再会を果たす。

 

観終わった後の感想だが、第一印象は、

 

早苗怖っっ!!

 

だ。

 

 

早苗は聡史のマネージャーにもかかわらず、かねてから聡史に思いを寄せていて、

聡史と洋子が近づくのを快く思っていなかった。

 

パリに住む洋子が日本に来て一緒になろうという日、

聡史が落とした携帯を手にしたことで彼と洋子の関係を知ったのだが、

そこで二人の関係を終わらせるために、聡史になりすまして

洋子に別れのメールを送ったのだ。

 

聡史への想いが溢れて・・・と言える行為だが、彼女はちゃっかり聡史と結婚している。

よくそんなことができるな、と背筋が寒くなる。

 

そして、筆者がもっとも恐ろしいと感じたのは、早苗が洋子に罪の告白をするシーンである。

 

早苗の所業を聞いた洋子は、早苗に対し努めて冷静に「 今幸せ?」と聞く。

すると早苗は、満面の笑顔でこう言う。

 

「はい、とっても幸せです」

 

本当に恐ろしい。

自分がその人の幸せをぶち壊したのに、その人の代わりに自分だけ幸せになっておいて、

どの口が言えるのか。

まぢで女怖い。ほんと怖い。

現実世界でこんな場面に出くわしたらトラウマになるだろう。

 

早苗のサイコな言動はその後も続く。

 

家族団欒の一コマである。

再起のニューヨーク公演に向けて準備を進める聡史に、早苗はこんな内容のことを言う。

 

「一度花が咲いてしまえば、もう蕾のことなんて思い出せないものよね」

 

あくまで筆者の解釈だが、早苗は、家庭(花)を持った以上、

独身(蕾)時代のことなんて考えるべきではない、つまり、

今更洋子との関係なんてうまく行くはずがない、と言っているのだ。

 

さらには、ニューヨークに出かける朝、早苗は聡史にこうも言っている。

 

「ニューヨークでは何も気にせず過ごしてきて」

 

一見、洋子との再会を許容しているようにも思える。

しかし、実はそうではなく、先の花について言ったことを踏まえ、

あなたが一度築いた家庭(花)を捨てて洋子の元に行くわけがないって信じてるから、

と釘を刺しているようにも見える。

 

映画は、ニューヨークのセントラルパークで、聡史と洋子が出くわし、

お互いに微笑みかけて各々が(おそらくお互いに向かって)歩き出すところで終わっている。

 

おそらく、二人はこの後、これまでの話で盛り上がることになるのだろうが、

先の早苗の言葉が暗示するように、二人の関係は発展せずに終わる

(あるいは発展したとしてもハッピーエンドにはならずに終わる)のではないかと考える。

 

平野氏の著書のとおり、いろいろ考えながら観た感想はこんな感じだ。

 

ちなみに妻は、この映画をハッピーエンド、

つまり、聡史と洋子の関係が発展していくように捉えたようで、

筆者が感想を述べると、不機嫌になってしまった。

 

そんなに深読みして映画を観ても楽しくない。

せっかく幸せな気持ちになったんだから、それを壊してほしくない。

 

トホホ。。。

ちょっとしたことで起こる女性は本当に怖い。

 

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