今回は、一冊の本を紹介したい。
『三行で撃つ』
著者は、朝日新聞編集委員であり、現役の記者でもある近藤康太郎氏。
偶然寄った本屋で平積みになっていた。
表紙が気になり手に取った。
ペンを構える骨ばった手が真ん中に描かれている。
無骨な印象を与える。
表紙をめくるとこんな言葉が。
わたしにしか、書けないものは、ある−
文章は、見えなかったものを見えるようにすること
文章は、見えていたものを見えなくすること
そして数ページ読み、これこそ筆者が今必要な本と確信した。
断言する。
ライター必携の本といってもいい。
文章術を、これほどまでに明確、簡潔かつ体系的に書いた指南書があるだろうか。
筆者が衝撃を受けたのは、第2章。
ここでは、ライターの禁じ手として、常套句や、擬音語、擬態語、流行語を挙げている。
読者に与えるイメージが画一的になるからだ。
そして何より、それらを使うとき、ライターは頭を使っていない。
それがけしからん、というわけだ。
氏は、形容詞すら使うなとまで言っている。
代わりに、事実を書け、と。
事実の描写だけで、ものの状態・人の心情が表現できるのだ。
それが、プロのライターの仕事。
常套句や形容詞を多用してきた筆者。
今まで書いてきた文章はなんだったんだ、と思わされる。
文章を書くとき、いかに手を抜いてきたか。
いかに読者のことを想像していないか。
本気で作家を目指していたのか、と自分を殴りたくなる。
とにかく、この本には「目から鱗」な事実がたくさん書かれている。
この事実を知らぬまま、作家を目指すのは「やばい」。
直前の二行は、筆者の戒めのために書いたものである。
もっと精進せねば。